皆さまご無沙汰しております。
早いもので9月になりましたが、まだまだ暑い日が続いていますね。
気温の変化が激しい季節ですので、くれぐれも体調管理には気をつけてください。
今回は進が担当させてもらいます。
知って得する病気シリーズ 今回は”気管虚脱”という病気についてお話ししてみようと思います。
気管は、喉頭(気道の入り口)から肺まで空気を送るのに必要なホース状の器官のことです。
この気管を詳しく見てみると、
ドーナツ状の軟骨が積み重なってひとつのホース状の管を構成しています。
「気管虚脱」は、このドーナツ状の軟骨の一部分がへこんでしまう(虚脱する)ことが原因で
咳や呼吸困難など様々な呼吸器症状を引き起こす病気として知られています。
この病気は多くの場合、気管軟骨が加齢とともに硬くなることで虚脱しやすくなると言われていますが、若い子でも見かけることがあります。
気管虚脱は胸部のレントゲン検査にて診断します。
吸気と呼気の両方のタイミングでレントゲンを撮影すると、どの部位の気管が虚脱しているのかを確認することができます。
気管虚脱の治療は基本的に内科治療(薬物療法)により咳症状を抑えていくことになります。
気管虚脱自体は自然に良くなることはありませんので、
獣医領域で使用可能な鎮咳薬をうまく組み合わせながら咳を抑えて、
日常生活がより快適になるようにしていきます。
しかしながら内科治療ではうまくコントロールできずに、呼吸困難で命に関わる場合もあります。
そのような患者さんでは、
手術リスクはありますが外科治療により呼吸困難を改善することも可能です。
当院で推奨する気管虚脱の外科治療は、”気管ステントによる治療”になります。
これは全身麻酔下で、気管内に拡張型ステントを虚脱部位に挿入する治療になります。
これにより気管虚脱で呼吸困難に陥った患者さんを救うことが可能になります。
気管ステントは永久的に気管内に留めておくことになりますので、
その後のフォローアップは必須になります。
図1
正常な気管(図1)は、入り口から肺まで太さ(気管径)が同じです。
図2
重度な気管虚脱の患者さんのレントゲン画像です(図2) *気管の中央が虚脱しているのが分かります。
咳が続くと呼吸困難を呈することも増えてきていました。
図3
気管ステント治療後のレントゲン画像です(図3)
現在ステント留置後の経過を慎重に観察しています。
気管虚脱は患者の高齢化に伴い、比較的多く見かける病気になってきています。
治療にはリスクや合併症もありますので、詳しくはかかりつけの獣医師に相談してください。
それではまた次回お会いしましょう。
進