皆さま大変ご無沙汰しております。進でございます。
うちの看護師はブログにたびたび登場しておりますが、私は本当にしばらくぶりになります。
なかなか更新できずにサボっててすいません。
講演や執筆など何かと仕事が増えてきているので、機会があればまた私の活動内容などもブログにアップしていきたいと思っております。
さて今回のお話は、犬の僧帽弁閉鎖不全症の根治手術に関するトピックスです。ご存知の方も多いと思われますが、犬の僧帽弁閉鎖不全症(弁膜症、僧帽弁逆流症、MRなどと呼ばれています)は、10歳前後の小型犬種に比較的多く認められる弁(左心房と左心室を分ける弁)の病気であり、これに罹患すると早期に心不全の症状を呈する大変怖い心臓病のひとつであります。
まず基礎的な知識として、医療におけるこの病気の位置づけでは、ほとんどが外科手術により治療されて完治しています。
人では明確なガイドラインが規定され、体外循環(人工心肺)により僧帽弁の修復手術が実施されているのが現状です。一方獣医療では、体が小さい犬では体外循環による手術が難しく、ほとんどのケースで心不全に対する内科治療を試行錯誤しながら患者さんの治療にあたっているのが実情です。しかしながら内科治療も限界があり心不全発症から約1年ほどで様々な問題が出てきてしまう子も少なくありません。
我々の関西どうぶつの心臓病研究会では、
関西における”犬の僧帽弁閉鎖不全症の外科治療施設”になれるように取り組んできており、
ご家族の皆さんに治療として提供できるようになってきております。
手術の概要としては、”人工心肺を用いて心臓を止めて心臓内の弁(僧帽弁)を修復します。修復後に再度心臓を鼓動させて終了”となります。言葉で書くと簡単そうですが、人工心肺は非生理的な環境下での手術ですので、術後の血栓形成などいくつかの合併症やリスクと向き合わなければなりません。それらを乗り越えると心臓は正常な機能を回復して患者さんは普通の生活を送れるようになります。今まで飲んでいた何種類ものお薬生活からも解放されます。
当院での手術風景や患者さんの様子です。
本手術の全身麻酔管理には麻酔専門医の長濱先生(VAS小動物麻酔鎮痛サポート)を
招聘して呼吸・循環・痛みの管理などを行ってもらっています。
実際に体外循環を行っている様子です。当院では国立循環器病研究センターの
臨床工学士(四井田臨床工学士)を招聘して人工心肺の管理を行ってもらっています。
退院前の患者さんの様子です。術後は約1週間ほど入院が必要になります。
術後も慎重に経過を観察していき、術後1ヵ月、術後3ヵ月、術後6ヵ月と定期的に検診をしていくことになります。
すべての外科治療にはリスク・合併症があります。
その中でも開心術は比較的負担が大きい手術でありますので
十分にリスクや合併症を知った上で治療を受けるかどうかを判断する必要があります。
我々はその先に心臓病から解放され元気に走り回れる未来を作れる可能性があれば、
チームスタッフとしてサポートを惜しまず、患者が無事退院できるように治療にあたっています。
病気のこと、治療のことなどいつでもお気軽にご相談ください。
それではまた。