大変ご無沙汰しております。
気付いたらもう4月、気付いたら桜が満開ですね。
今回は私、進が担当させていただきます。 看護師さんには早く書くようにいつも怒られています(^_^;)
知って得する病気シリーズ、
今回は”門脈体循環シャント”という病気について書いてみようと思います。
この病気は私が昔から専門的に治療にあたってきた肝臓病のひとつであり、
先日までその患者さんが治療のため入院しておりました。
現在治療も無事に終わって、自宅療養になりましたのでいい機会ですからこの病気を詳しくお話ししてみようと思います。
まず門脈体循環シャントという病気を知るためには、門脈と大静脈というお腹の中にある2つの大きな血管を知っておく必要があります。
●門脈:腸から吸収した栄養素、腸内細菌、毒素(アンモニアなど)をすべて
一度肝臓に運ぶための血管で 肝臓に運ばれた血液は肝臓内で毒素や細菌は代謝されて、
きれいな血液が全身に運ばれていく。
●大静脈:全身の血液を肝臓を通ることなく心臓(全身)へと戻していく血管
つまり門脈体循環シャントという病気は、
”生まれつき門脈と大静脈(体循環)をつなぐバイパス(シャント)血管”を持っているのです。
このバイパス血管の問題は大きく分けて2つあります。
①肝臓に入る血液量が減少するので、肝機能が徐々に低下してくる。(個人差あり)
②本来であれば肝臓で代謝される毒素が全身をまわるため、様々な症状が起こる。
*この病気は数年前までは、比較的若齢で発見されることが多い病気でしたが、
最近では5歳齢以上で見つかるケースもあり、なかなか発見できずに、
治療が遅れてしまう患者さんがいるのも事実です。
特徴的な症状は
●神経症状 けいれん発作 食後のふらつき 一過性の盲目など (肝性脳症といいます)
●消化器症状 食べるのに痩せている(発育不良) 吐きやすい 下痢など
●泌尿器症状 門脈体循環シャントで特徴的な結石(尿酸アンモニウム)の形成による膀胱炎症状(頻尿、血尿、尿道閉塞など)
診断には、血液検査、腹部超音波検査、CT検査(麻酔必要)などが有用です。
本病気と診断された場合には、外科手術が必要になります。
手術内容としては、異常なバイパス血管を完全に遮断してしまうことで正常な血液の流れに戻してあげることになります。
①手術前の血管造影検査
(白く増強されているのが血管です。左側の細い枝が肝臓内に入る血管で、右の太い血管がシャント血管です)
②手術後の血管造影検査
(右に見えていた血管がなくなり、肝臓内の血管枝のみきれいに描出されています)
上の手術写真のように血液の流れが正常に回復すれば、病気は治ります。
(治療に際しては注意点やリスクなどもありますので、詳しくは獣医さんに御相談ください)
もしあなたの家族に、この病気が疑われた場合は
十分に主治医さんと相談して治療方法を考えてあげてください。
(退院前の様子です、いい笑顔ですね。)
それではまた。